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『心マトリクス』と『けテぶれマップ』誕生秘話——教育実践の裏側から生まれた2つの羅針盤

主体的な学び自己認識可視化学び方信じて、任せて、認める

この記事では、教育実践ツール「心マトリクス」と「けテぶれマップ」がどのようにして生まれたのか、その誕生の背景とプロセスを詳しく解説します。

心を知り心に勝つ」という縦軸と、「信じて思いやる」という横軸から心マトリクスは形作られました。

そして、子どもたちの学びの道筋を可視化する「けテぶれマップ」も同時期に誕生し、これら2つのツールが対の関係にあることを明らかにします。

はじめに:教育現場のリアルな葛藤 いつも温かいコメントをいただき、ありがとうございます。このシリーズは、皆さんの反応をいただきながら進めていくのが良いと感じています。

今回は「心マトリクス」がどのように出来上がったのか、その経緯を詳しくお話しします。その前に、私の教育者としての経験、特に「失敗談」について少し触れたいと思います。

インタビューなどで「失敗談はありませんか?」と聞かれることがあるのですが、実はあまり思い出すことができません。これは、私の中で「失敗」が最終的な結果ではなく、成功に至るまでの「途中経過」として再編集されているからだと思います。もちろん、保護者との関係や職員室での人間関係など、大変な経験は数多くありました。

私が人間として強く憤りを感じるのは、子どもたちが不当に傷つけられる場面に遭遇した時です。例えば、ある同僚が、追い詰められた子どもをさらに否定するために、事実を歪めて生徒指導事案にしようとしたことがありました。また、怒鳴りつけることを指導の道具として使い、子どもたちを精神的に追い詰めるような指導法を目の当たりにしたこともあります。

このような経験を通して、私の中で「子どもたちにとって本当に良い影響とは何か」という問いが常にありました。その問いへの答えを模索する中で、後の心マトリクスけテぶれマップにつながる考え方が生まれてきたのです。

「心マトリクス」の誕生——2つの軸の発見 私が教員6年目、4年生を担任していた時、「けテぶれ」を一つのパッケージとして子どもたちに渡すという試みは大きな成功を収めました。学級経営は非常にうまくいき、子どもたちも主体的に成長していく姿を見せてくれました。

その中で、私は授業や生活指導を通して、子どもたちに一貫して伝えたいメッセージがあることに気づきました。それは、場当たり的な指導ではなく、確固たる「柱」に基づいたものでありたい、という思いです。その柱は、大きく分けて2つありました。

縦軸の原型:「心を知り、心に勝つ」 一つ目は、「一生懸命努力すること」です。私は当時、「心を知り、心に勝つ」という標語を学級通信のタイトルにし、指導の軸としていました。

  • 心を知る:自分の心の状態を客観的に知ること(後の地球パワー)
  • 心に勝つ:自分の弱い心に打ち克ち、行動すること(後の月パワー)

この考え方が、心マトリクスの「縦軸」の原型となりました。

横軸の原型:「信じて、思いやる」 もう一つの軸は、「人と温かくつながること」です。これは、私が大学時代から大切にしていた「信じて、思いやる」という考え方に根ざしています。

豊かな人間関係は、相手を「信じる」気持ちと、その信頼に応えようと相手を「思いやる」気持ち、この2つが手を取り合うことで生まれる、とずっと考えていました。この「信じて思いやる」という関係性が、心マトリクスの「横軸」、つまり太陽軸の核となったのです。

教室での実践とツールの進化 この2つの軸、「心に勝つ/負ける」(縦軸)と「誰かのために/自分ばっかり」(横軸)を組み合わせることで、四象限の図が生まれました。私はこれを画用紙に書いて、特に説明もせずに教室に貼り出しました。

すると驚いたことに、子どもたちが「先生、今自分はここだ」というように、この図を自発的に使い始めたのです。これは、子どもたちのメタ認知を促進するツールとして機能することに気づいた瞬間でした。

当初は「心の交差点」などと呼んでいましたが、やがて「心マトリクス」という言葉が閃き、正式な名称となりました。「マトリクス」には「母体・基盤」という意味があり、「心が生まれてくる場所」というイメージにぴったりでした。

学年末には、この図を元に子どもたちと一年間の学びを振り返り、「信じて思いやる」「考える・やってみる」といった言葉で各軸をさらに解像度高く定義し直しました。このプロセスを経て、心マトリクスは子どもたちの思考の道具として完全に定着したのです。

3つのツールの統合 この心マトリクスの軸を整理する中で、これまでバラバラだったツールが一つに統合される瞬間が訪れました。

  • 考える:思考のプロセスであるQNKS
  • やってみる:自律的学習サイクルであるけテぶれ

心マトリクスの月パワー(考える・やってみる)を発揮するための具体的な方法論が、QNKSけテぶれであると位置づけられたのです。これにより、3つのツールが有機的に結びつきました。

もう一つの誕生:「けテぶれマップ」 実は、心マトリクスとほぼ時を同じくして、もう一つの重要なツールが生まれていました。それが「けテぶれマップ」(旧名称:学習会マンダラ)です。

心マトリクスが心の「内面」を扱うツールであるのに対し、学びの「型」や「進め方」を整理する必要性も感じていました。けテぶれQNKSを実践する上で、子どもたちがどのようなルートを辿ればより賢くなれるのか、その「地図」を示したかったのです。

そこで、学習のプロセスを樹形図のように展開し、「横に進む(広げる)」「縦に深める(掘り下げる)」という二次元で表現したマップを作成しました。これも教室に掲示したところ、子どもたちが自分の学習ルートを振り返るための非常に有効なツールとなりました。

2つのマップの関係性——空海のマンダラとの符号 こうして生まれた2つのツール、「心マトリクス」と「けテぶれマップ」は、実は対になる関係にあります。

  • 心マトリクス:心の内面の世界を表すマップ
  • けテぶれマップ:学習という外面(行動)の世界を表すマップ

この構造は、後に私が知ることになる、真言密教の開祖・空海が遺した2つのマンダラ(曼荼羅)と驚くほど符号していました。

  • 胎蔵界曼荼羅:内面的な世界、心の母体を表す。
  • 金剛界曼荼羅:現実世界、論理的な智慧を表す。

この発見には、自分でも驚きました。心マトリクスが胎蔵界、けテぶれマップが金剛界に対応するように感じられたのです。

まとめと次回予告 今回は、心マトリクスけテぶれマップという、私の教育実践の核となる2つのツールがどのようにして生まれたのか、その誕生の物語をお話ししました。

これらのツールは、職員会議中にアイデアが組み上がったりと、ひらめきから一瞬で形になることもありますが、その背景には長年の実践と子どもたちとの対話の蓄積があります。

しかし、話はまだ終わりません。この時点では、まだ「けテぶれシート」は登場していないのです。次回は、さらに話を進めていきたいと思います。

またコメントをいただけると嬉しいです。それでは、また。